低価格,音質も良しのオススメモニター

DTM/DAWソフトを使った音楽制作において、自分の作っている曲、サウンドをどのように聴くかは大切です。

Step One DTM School川崎元住吉教室にお越しいただいているDTM初心者の方は、パソコン用のスピーカーを使っていたり、3,000円前後で手に入るヘッドフォンを使っていたり、パソコン内蔵のスピーカーで聴いていたりしますが、順調に曲が出来上がってきて「さぁ、ミックス!!」となると、安価なスピーカーやヘッドフォンでは、正確にサウンドを把握出来ないという問題が起きます。

具体的に言うと、「EQしてもコンプしても、違いがよくわからない…」という状況です。

そこで、私は決まってこう言います。

「EQしてもコンプしても違いがわからないのは、自分の耳のせいではありません」

大雑把に申し上げますと、ヘッドフォンでは10,000円を切る価格帯のもの、モニタースピーカーでは、30,000円以下の価格帯のものになると、そもそも音楽制作に耐えうる性能ではなく、安価な部品でそれなりに聴き心地の良いものになるように無理やりチューニングされていることが多い。
つまり、音楽制作で求められる原音忠実再生という面では、かなり見劣りします。

これは、どういうことかと言うと、良質なモニター環境では、どなたでも音の聴き方を心得れば、3dbもEQでブーストすれば、音の違いがわかります。

しかし、音楽制作向きではないモニターを使っていると、6dbですとかEQでブーストしないと違いがわからない…EQに対してスピーカーの反応が鈍いということです。

さらに、「EQはブーストよりカットで使う」とよく言われますが、音楽制作向きではないスピーカーやヘッドフォンでは、ブースト方向には反応してくれても、カット方向はホント「カットし過ぎて、逆にしょぼくなった…」くらいまでやらないと、違いがわからないものも見受けられます。

なお、問題なく録音されている状況では、極端な音作りをする場合は除き、EQはノーEQでも良いか、EQしても3db以内のブーストやカットで事足ります。

つまり、「ミックスを出来るようになりたい!!」とお考えの方は、オーバーなEQやコンプをしないためにも、そして、自分の耳を鍛錬する上でも、きちんとしたモニター環境を構築しないことには始まらないと言えるのです。

ただ…と言っても、予算や自宅で音が出せるか…という問題もあります。

そこで、当DTM教室がミックス初心者にオススメしているモニタースピーカーとモニターヘッドフォンをご紹介します。

ミックス初心者におすすめするモニタースピーカー

YAMAHA MSP5 STUDIO

だいたい、宅録で使えるモニタースピーカーは、5〜8万円くらいの価格帯で売られているものになります。

これ以上の価格がするモニタースピーカーのほとんどは、モニタースピーカーのサイズが大きくなってくるため、それなりの音量で鳴らせないと、性能を発揮出来なくなります。

この「それなりの音量」というのは、マンション等集合住宅では間違いなく苦情が来る音量…。

つまり、大雑把に10万円を超えるモニタースピーカーは、スタジオ向きと捉えて差し支えないということです。

しかし、モニタースピーカーに5〜8万円をかけるというのは、DTM/DAW初心者にとってはかなり高額な出費となりますので、私も積極的におすすめ出来ません。

でも、YAMAHA MSP5 STUDIOだけは違うのです。

YAMAHA MSP5 STUDIOは、だいたい45,000円前後で手に入るため、ミックスで問題なく使えるモニタースピーカーの価格帯5〜8万円よりも若干安いのですが、これが十分なクオリティーを持っているのです。

なので、このYAMAHA MSP5 STUDIO、結構ロングセラー商品として売れています。
楽器店で「モニタースピーカー買いたいんですけど…」と相談を持ちかけると、必ずおすすめされる候補に上がると言っても過言ではないでしょう。

なお、YAMAHA MSP5 STUDIOの特長ですが、ローが控えめで、きっちりハイが聴こえるモニタースピーカーという印象を私は持っています。

なお、この「ロー控えめ」というのが、宅録には功を奏することが多いです。

それはなぜか…大抵、自宅の机にスピーカーを置くと、低域がボンボコ暴れる傾向があります。

というのも、音響の調整がされているスタジオと違い、自宅にスピーカーを置くと、スタジオに比べて部屋の響きが多いということが多く、モニタースピーカーは適度に壁から離してセッティングするべきなのですが、スペースの問題で壁にベタ付けして置かざるをえないことも多い。

それが、低域がボンボコ暴れだす…ようは、不必要に低音が出てきて、クリアに音を聴き取れないという問題が起きるということです。

また、スピーカーを置く台も重要です。

モニタースピーカーの下には、インシュレーターと呼ばれるスピーカーの振動を抑えるものを置くというのが定番ですが、インシュレーターをかませたとしても、例えば、モニタースピーカーを置く机なり、棚なりが、しっかり重さがあって、硬い材質のものでないと、これがまたローが暴れだす原因になります。

※インシュレーターは、オーディオマニアがスピーカーの音質改善に使うグッズでもありますので、価格はピンキリ…中にはウン万円するようなものもありますが、audio-technica AT6099などは、導入しやすい価格で、効果もそれなりに実感出来ますので、これで十分です。

つまり、YAMAHA MSP5 STUDIOよりも元気にローが出てくるモニタースピーカーは、GENELECなど、他にもあるのですが、これらは、音をしつけるのが結構大変。

それに比べ、YAMAHA MSP5 STUDIOは、宅録において使いやすい音なのです。

なお、私の所属する作家事務所のプリプロスペースに置いてあるのもYAMAHA MSP5 STUDIO。
スタジオで見るモニタースピーカーとなると、結構GENELECが置かれている印象も強いのですが、簡易的な宅録スペースには、圧倒的にYAMAHA MSP5 STUDIOが導入されていることは多いですね。

YAMAHA MSP5 STUDIOに欠点がまったくないかと言えば、もちろんそういうわけでもないのですが、ミックス初心者に価格面でも安心しておすすめ出来るモニタースピーカーとなると、YAMAHA MSP5 STUDIOしかないかな…と私は考えています。

モニタースピーカーで音が出せないお住まいの方はモニターヘッドフォンをきっちり選ぶ

モニタースピーカーを使う場合、やはり条件として音が出せる住宅環境というのが必須です。
RC構造のマンションや一軒家にお住まいの方は、防音という意味である程度有利なのですが、鉄骨造のマンションや木造のアパートにお住まいとなると、モニタースピーカーを使うというのは、あまり現実的ではなくなります。

そこで、音が出せない住宅環境にお住まいの方には、モニタースピーカーを買うより、きちんとモニター出来るヘッドフォンを買うということをオススメしていますし、YAMAHA MSP5 STUDIOを買うことが予算的に厳しい方にも、ヘッドフォンの購入をおすすめしています。

なお、やはりミックスはスピーカーでやった方が仕上がりが良くなる傾向にあります。

これは、ヘッドフォンだとすべての楽器パートがきちんと聴こえすぎるからです。

ノイズの確認や、細かな定位(パン)決める、50〜100Hz以下の低音を聴くなど、重箱の隅をつつくような聴き方をするときにはヘッドフォンの方が有利なのですが、ミックスはつまるところ音量バランスをどうとるか以外の何物でもないので、スピーカーで全体を俯瞰で聴く方が、うまく音量バランスが決まることが多いのです。

また、爆音で聴くことが出来るヘッドフォンは、耳にもあまりよくないですしね…。

でも、ヘッドフォンだって慣れればミックス出来ます。
また、モニタースピーカーを買うよりも安価です。
さらに、モニターヘッドフォンには、きちんと業界定番機種があるから選びやすいというのもあります。

では、モニター用ヘッドフォンの超定番で、初心者に安心してオススメ出来るヘッドフォンをご紹介します。

Sony MDR-CD900ST

Sony MDR-CD900STは、長らくスタジオの定番ヘッドフォンとして使われています。
つまり、音の好みうんぬん以前に、定番なんだから、まず最初に買っておこうと言えるということですね。

実は、超定番のSony MDR-CD900STですが、これよりも気持ちよく聴こえるヘッドフォンは他にあります。
おそらく、リスニング用ヘッドフォンに慣れた方からすれば、Sony MDR-CD900STを良い音だと感じない方もいらっしゃるかもしれません。

でも、ミックス初心者の方は、まず、Sony MDR-CD900STで様々な曲を聴いてみてください。

楽曲制作の現場でスタンダードとされているSony MDR-CD900STで聴くサウンドは、ざっくり言えば、制作者が聴いている音そのものと聴く機会と考えても良いし、自分の中で良いミックスという基準を作るのに最適なのです。

なお、Sony MDR-CD900STが長らく愛用されている理由は他にもあります。

まず、音楽制作に向くヘッドフォンの条件として、密閉型であることというのがあります。
密閉型のヘッドフォンは、音漏れがしにくいため、レコーディングのときに、オケがマイクに入ってしまうということが、リスニング用ヘッドフォンに多いオープンエアー型に比べ少ないのです。

逆に、密閉型のヘッドフォンは、リスニング用途として考えると、それほど気持よく聴こえないかもしれません。
ことに、Sony MDR-CD900STの特長は、音が近く聴こえるという点なので、あんまり気持ちよく聴けるヘッドフォンではないのです。

しかし、それがミックスにおいて良いのです。

オープンエアー型のヘッドフォンは、軽くリバーブがかかったように聴こえるものが多いのですが、それでは自分がどれだけ今リバーブをかけているのかわかりません。

Sony MDR-CD900STは、その点、音が近いので、リバーブの量がはっきり聴き取れます。

なお、ヘッドフォンでミックスする際に特に気をつけることは、リバーブ等空間系エフェクトで、これがモニタースピーカーで聴いた印象とかなり違うという点。

モニタースピーカーは、部屋の響きも含めて自分の出しているサウンドを聴いていますから、きっちり音響設計されていない自宅では、既にルームリバーブをかけた状態で聴いているという状況ですが、ヘッドフォンは部屋の響きに影響されませんから、ヘッドフォンでリバーブ感をかなり感じるぐらいかけると、スピーカーで聴くと結構響いているように聴こえることが多いです。

ベストのリバーブ感は、ヘッドフォンでも程よく、スピーカーでも程よくですし、現代の音作りの全般的な傾向として、「低音(主にキックとベース)にリバーブをかけずタイトに」という流行がジャンル問わずありますから、深くリバーブかけると、リバーブを多用する傾向にあった80〜90年代色が強くなってしまい、現代的なサウンドになりません。

そういう意味で、Sony MDR-CD900STは気持よく聴けないかもしれないけど、サウンドを正確に把握出来るという意味で優秀なのです。

私もご多分に漏れず、最初に買ったヘッドフォンはSony MDR-CD900STでした。

そして、数年してaudio-technicaのヘッドフォンやAKGのヘッドフォンに浮気した時期もありましたが、結局ここ5年くらいはSony MDR-CD900STに戻ってきてしまい、もう、ヘッドフォンはSony MDR-CD900STがなくならない限り使い続けるだろうな…という感じです。

もう、音の好みとかではなく、Sony MDR-CD900STでこう聴こえれば大丈夫という自分の中でのミックスの基準を作ってしまったということなんですね。

どうぞ、ミックスをこれから本格的にやってみようとお考えでしたら、Sony MDR-CD900STを使ってみてください。

そして、Sony MDR-CD900STでミックスに慣れたら、自分の好みのヘッドフォン探しをしてみるというステップを踏むと、きっと自分にとっての最高のヘッドフォンに出会えるかもしれません。