最近、Rupert Neve Designs Master Bus Transformer(以下、Neve MBT)が欲しいな…と思って情報を収集していました。

Neve MBTは、EQ、オプトコンプ、ステレオイメージャー、サチュレーターの4段構成になっていて、DAW上で作り上げた音をステムにまとめて送ると魔法がかかるというコンセプトのアウトボード。

プラグインで大概のことが出来てしまう現代において、リコールは出来ないわ、インフレの影響で価格が跳ね上がってしまったわ、コスパやタイパなんて言い出したら絶対に買う気がしないアウトボードをわざわざ組み合わせる価値と言えば、アナログならではの魔法しかありません。

Neve MBTはその点、デジタルのミックスにアナログの質感を乗せるという点に振り切った機材で、私にとって魅力的に見えていました。

ちなみに、Neve MBTは、本記事掲載時点で627,000円します。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

RUPERT NEVE DESIGNS MBT: Master Bus Transformer
価格:627,000円(税込、送料無料) (2024/9/9時点)


これがセール+クーポンで8,160円で試せるということでThe Kiive Audio NFuseを即買いをさせていただきました。

Neve MBTとSSL Fusionを組み合わせたバスプロセッサーがNFuse

個人的にSSLの質感が好きではないので、NFuseを購入した目的は、Neve MBTをとりあえず試したいという動機でした。

そのため、Neve MBTに偏ったNFuseの使い方レビューになることをご了承ください。

なお、私は音楽制作におけるSSLの功績(SSLの卓は音楽制作の歴史においてとても重要)について全くリスペクトしていないという訳ではありませんので、その点はご理解いただいた上で以下お読みいただけましたら幸いです。

NFuseの2mix使用例

The Kiive Audio NFuseはステムにも使えますが、ここでは分かりやすく2mixに使用した例をご紹介します。

ソースは土曜夜の2時間DTM企画で制作したシティーポップ風曲になります。

NFuseバイパス
NFuseを使用

1.Input

インプットのHPFを35Hzに設定してローカットしました。

個人的に無碍にローカットを入れることには慎重な意見を持っていますが、Neve MBTのローカットはかなり緩やからしくその効きに興味を持っていました。

NFuseのNモードのHPFも仮に100Hzにローカットを入れてもローが激減してしまうわけでもなく、むしろローをタイトにすることが出来るので、非常に音楽的なローカットだと思いました。

また、Input段にあるローカットと、のちのローシェルフのブーストで、モヤつかず欲しいローの質感を作るというアイディアにも使えます。

2.EQ

Hz(Lo Freq)…103Hz

LFG(Low Freq Gain)…+1.73db

kHz(Hi Freq)…10.4kHz

HFG(Hi Freq Gain)…+3.85db


±9db出来るシェルピングタイプのEQですが、+9db上げたとしても極端に上がるわけではない点が好感触です。

また、ローとハイのシェルピングしかないため、細かな調整をするというより、ざっくり良い音にしたいからいじるという大雑把な感覚で向き合えるEQのため、まさに音質をトランスフォーム(変わる)しているなと思います。

3.Compressor

HI RAT…ON(5:1モード)

GR…3メモリ

Release…174.31ms

S/C HPF…88Hz

BLEND…15%


2:1の緩やかなコンプと5:1の強めのコンプが選べる仕様になっています。

2:1の緩やかな感じ、これをメーカーはGentleとPRしているわけですが、質感がより強く乗った5:1を今回は選択して深めのコンプ効果と原音を混ぜるパラレルコンプレッションする使い方をしました。

キックの低音が痩せるわけでもなく、タイトに気持ちよく止まる感じがやはりNeveの良いところだなと思います。

4.Stereo Imager

WIDTH…4.43

HPF…400Hz


サンレコのNeve MBTレビュー記事にも記載がありますが、WIDTHを思いっきり上げても破綻することがないのが不思議です。

普通のステレオイメージャープラグインだとWIDTHを全開にしたらリバーブが強調されてしまうわ、真ん中に定位しているキックやベースが引っ込んでしまうわ、ミックスが破綻してしまいます。

気持ちよくてついつい広げてしまいがちなWIDTHですが、サンレコのレビュー記事と同じように11時ぐらいの位置が良さそうというのが私の結論になりました。

ステレオイメージャーはさりげなくが良いですね。

ただ、ステムに使った場合はWIDTH全開も選択肢に入る音楽的なステレオイメージャーです。

5.Saturation

DARK…5.22

SHINE…2.99


DARKはNeve MBTで言うところのBlueで低域に効き、SHINEはSILKで高域に効きます。

サチュレーションと言えば、多くの場合高域が持ち上がる効果があるものが多いですが、低域に効くサチュレーションに個人的に興味がありました。

そもそも低域や中低域がモヤつくならば使いたくないな…と思っていましたが、DARK(Blue)の効果は本当に不思議で、モヤつくことなく50〜150Hzの量感が増す印象でした。

逆にSHINEはよくあるサチュレーションの効果で、上げれば上げるほどシャリシャリな音になりますので、ガンガン上げるものではないかなというのが個人的な感想です。

あともう1歩クオリティーが欲しい時にオススメ

The Kiive Audio NFuseは、あともう1歩クオリティーを上げたい時に役立つトランスフォーマーとして使えるプラグインです。

今ではiZotope Ozoneのように数回クリックするだけで簡単にクオリティーを上げられるマスタリングプラグインがありますが、Ozoneに勝手にやってもらうだけだと出来上がった音はOzoneの音になってしまいます。

また、iZotope Ozoneは優秀なマスタリングプラグインですが、中身を自分でいじろうとすると、とてもとても初心者向けとは言えない難しさがありますが、The Kiive Audio NFuseは音を変えることに特化しており、各セクションで起きる効果は明解で分かりやすいので、あともう1歩クオリティーを上げたい初心者の方にも十分オススメ出来るでしょう。

ぜひこの記事が皆様のご参考になれば幸いです。