キースイッチの反応

Tokyo Scoring StringsもLA Scoring Stringsもキースイッチの反応にもたつきがないのは、むしろKontaktエンジンが優秀だから??

私は音楽屋でプログラムのことまでは全く想像つきませんが、Cubaseと組み合わせて使う分には双方とも快適な使い心地です。

アタックの速さ

アタックはTokyo Scoring StringsもLA Scoring Strings3もコンセプト通りスタジオ系の音源なので、スピード感が求められるポップス系に最適

逆にデフォルトの状態では双方ともシンフォニックな響きを持つわけではないので、オーケストラの中で使う場合は、ミックスでの工夫が必要でしょう。

リリースの長さ

実は、今回の動画制作で初めてLA Scoring Strings3とじっくり向き合ったのですが、LA Scoring Strings2.5よりデフォルトの状態だとクセが強くなった気がしまして、MIDIプログラミングのやり方を変える必要がありました。

LA Scoring Stringsの特徴はディビジを自動でやってくれることだったりしますが、私自身「ディビジは自分で作ります」というスタンスだったので、LA Scoring Strings2.5では使っていませんでした。

なお、LA Scoring Strings3はデフォルトでONになっているので、やけにレーテンシーがあるな…と最初は戸惑いました。

しかし、Auto Divisiを切ることと、ヒューマナイズ機能を調整することでようやく思った通りに発音するようになりました。

Tokyo Scoring StringsはむしろLA Scoring Strings2.5と同じ雰囲気で、何も違和感を感じません。

音の近さ

Spitfireなどと比較すると、Tokyo Scoring StringsもLA Scoring Strings3も近い音がします。

そのため、今回の検証動画では使っていませんが、コンプで軽く抑えたいと感じるくらいの音です。

なお、Tokyo Scoring Stringsはマルチマイクのパッチ(メモリ消費が激しい)とデフォルトパッチがあり、マニュアルによるとデフォルトパッチを使うことを推奨しています。

そのため、今回はTokyo Scoring StringsのデフォルトパッチでLA Scoring Strings3と比較しています。

Tokyo Scoring Stringsのデフォルトパッチは、LA Scoring Strings3よりも距離を感じ、スタジオの響きも感じますが、普通にスタジオで録ったな…という程度の響きがあり、程よいです。

Tokyo Scoring Stringsは、必要であれば、マルチマイクのパッチを使ってさらに好みの音色にすることが可能なので、その点、使い勝手が良いと思います。

LA Scoring Strings3は、前バージョン2.5にあったARCがわかりやすくなったEnsemble Pageで、ある程度響きや距離感をコントロール出来るのですが、前バージョン2.5のARCに私自身あまり良い印象を持っていなかったので、LA Scoring Strings3でもデフォルトから一切いじらずに使いましたし、今後もそうでしょう

LA Scoring Strings3は、評価する人によってはネガティブレビューが出そうなくらい音が近いです。

ちなみに、私はコンプやリバーブを使えばどうにでもなると考えているため、エンジニアさん的発想で、ドライな方が良いと考えている人間です。

LA Scoring Strings 2.5のA.R.C. Stage & Color設定画面
LA Scoring Strings 2.5のA.R.C. Stage & Color設定画面。超円高だった頃に海外で購入したため、マニュアルが英語だったのと、私の使い方が悪かったのかもしれないが、いじればいじるほど音が悪くなってしまった…という印象。一切触らないことにした。
LASS3のSTAGE機能画面
LASS3のSTAGE機能画面。GUIがイマドキになったし、わかりやすい雰囲気になったが、ここで何かをしなくても困ったことはないので触らないでおこうと個人的に考えている。

CC1の反応

Tokyo Scoring StringsもLA Scoring Strings3もとても自然で、私のフィーリングに合います。

ただ、CC1を0に近づけていくとほぼ音が聴こえなくなるLA Scoring Strings3に対して、Tokyo Scoring Stringsは音量までガクンと落ちるわけではないので、クレッシェンド方向については同じフィーリングで使えると思いますが、デクレッシェンド方向については、違うプログラミングのやり方で挑むべきなんだなと思いました。

と言っても、この点については多くの方にとってネガティブな違いにはならないと思います。

Cubase CC1 コントローラーレーン
個人的にCubaseのコントローラーレーンがとても好きで、数値を意識せず見た目と耳で作り込んでいける。

レイテンシー(発音の遅れ)

ギター音源なんかもそうですが、ストリングス音源もサンプルの立ち上がりの速さとは別に、レガートやディビジの処理のためにレイテンシーが発生します。

通常、トラックディレイなどを使って対応すれば問題ないので、この類のソフト音源に慣れた方にとってはレイテンシーそのものがネガティブになることはないと思いますが、細く仕様を理解して使う必要は出てきます。

たまに当教室受講者様から「MIDIデータを少し前にズラして打ち込むべきですか?」というご質問を頂きますが、確かに十年以上前はそうせざるを得ないこともありました。しかし、2021年現在で現実的にDTMが楽しめるパソコンのスペックならばその手法は、ほぼやる必要はないと個人的に考えています。

Tokyo Scoring Stringsのレイテンシーは?

Tokyo Scoring Stringsの表現力を最大限に発揮させたい場合、以下の仕様となっています。

  1. LOOKAHEADモードに設定
  2. Delay Compensationプラグインをインサート
Tokyo Scoring Stringsで一番リアルな演奏をしてほしい時に使うLOOKAHEADモード。最大1,000msの先読み時間が必要。
一番リアルな演奏をしてほしい時に使うLOOKAHEADモード。最大1,000msの先読み時間が必要。
Tokyo Scoring StringsでLOOKAHEADモードを設定したら、Delay Compensationプラグインをエフェクトとしてインサートしておく仕様になっている
Tokyo Scoring StringsでLOOKAHEADモードを設定したら、Delay Compensationプラグインをエフェクトとしてインサートしておく仕様になっている

MIDIデータの先読みを行い、その先読み時間の間に最適なサンプル選びをTokyo Scoring StringsがやってくるというのがLOOKAHEADモードの概要のようですが、実際LOOKAHEADは、他のトラックの再生を遅らせることによって実現している機能のため、補正のためのプラグインが必要とのことですね。

なお、私の検証で使ったデータにおいては実際215msレイテンシーが発生していることが確認出来ました。

ようは、LOOKAHEADモードによる処理は最大1,000msあれば処理出来るという仕様と想像出来ますね。

Tokyo Scoring Strings ADVANCEDページで実際発生しているレイテンシーを見ることが出来る親切設計
ADVANCEDページで実際発生しているレイテンシーを見ることが出来る親切設計

なお、実際最大1秒も発音が遅れてしまったらリアルタイムレコーディングなんて絶対出来るわけもないので、普段は0レイテンシーモードでプレイの質は落ちてしまうもののとりあえずフレーズをさくさく詰めて行くか、少々のレイテンシーが許容できるのであれば、スタンダードモードでプレイの質を担保しながら作業を進めるかのどちらかが推奨されるのでしょう。

この仕様がご自身のワークフローに合うかどうかは好みが分かれそうです。

LA Scoring Strings 3のレイテンシーは?

LA Scoring Stringsは、Ver2.5の頃でもオートディビジを切っている状態ならば基本タイトなのであまりレイテンシーを気にする必要はなかったのですが、曲によってレガートをたっぷり効かせるとレイテンシーが気になることがありました。

レイテンシーが気になる時には、トラックディレイを使って耳で感覚的に合わせていましたが、Ver3になって明記される…ようになったと思います。

Ver.2.5の頃もあったのかもしれませんが、ずっと耳でやってしまっていました…

LA Scoring Strings Auto Divisiを切った状態でも40ms早めたら違和感なく発音しました
Auto Divisiを切った状態でも40ms早めたら違和感なく発音しました
LA Scoring Strings Look Aheadを有効にすると440ms遅れることが明記されていますのでわかりやすい
Look Aheadを有効にすると440ms遅れることが明記されていますのでわかりやすい
LA Scoring Strings 1stバイオリンのCubaseトラックインスペクタ。トラックディレイを-40.00に設定している
LA Scoring Strings 1stバイオリンのCubaseトラックインスペクタ。トラックディレイを-40.00に設定している

トラックディレイはエントリークラスのソフト音源では、ソフト音源の使い方という面でお世話になることはほぼありませんが、DTM初心者の方がステップアップのためにこの類のソフト音源を導入される場合、この点を理解して使われることをオススメします。

逆に、この類のソフト音源に慣れた方からすると、Look AHeadの時間が明確なのはいちいち考えなくて済むという意味で良いかもしれませんし、ギター音源なんかどれくらいレイテンシーが発生しているか、ページ階層の奥の方に設定出来る箇所があるものもあります。

その点、LA Scoring Strings3も親切になったなと思います。

メモリの消費量

Tokyo Scoring StringsもLA Scoring Strings3もそれなりに消費します。

Tokyo Scoring Stringsの1stバイオリンのメモリ消費量は1.73GB
LA Scoring Strings 3の1stバイオリンのメモリ消費量
LA Scoring Strings 3の1stバイオリンのメモリ消費量は2.42GB

私の持論ですが、こういったオーケストレーション系ソフト音源を使うことを想定してパソコンを購入するならばDTM初心者の方でも16GBがおすすめ

テンション高くDTMに取り組まれる方は32GBを推奨します。

特にMacのほとんどのモデルはメモリを後から増設出来ないため、8GBメモリの吊るしモデルを購入していた方がもっとクオリティーを求めてステップアップしようとご検討される場合、Tokyo Scoring StringsもLA Scoring Strings3も荷が重いソフト音源だと思います。

もちろん、8GBメモリのパソコンでも全く動作しないとは申し上げませんし、メモリが少ない状況下でも工夫して使う方法はいくらでもあるのですが、快適さを求めると16GB以上が欲しくなるレベルのメモリ消費量です。

まとめ

正直、私のような古参のDTMerは、浮かんでは消えていく新しいストリングス音源を懐疑的に見ていました。

特にソフト音源の流行というのは、DTM教室をやっていますと生徒さんのデータから感じるわけですが、やっぱり生き残って定番となるものは少ないのが実情です。

その点、SpitfireはViennaを脅かす素晴らしいクオリティーを持っていたため、定番として定着しました。

私がSpitfireの音源をあまり購入していないのはあくまで個人的な趣味であって、Spitfireを高く評価する方がいらっしゃるのは本当だし、Spitfireの製品はそう言わしめたるクオリティーを持っています。

今回、そこに飛び込んできたTokyo Scoring Stringsは、そもそもサウンドは日本人にとってお馴染みですから、あまり悪く言う人はいないんじゃないかと思いますし、使い勝手もきちんとしたクオリティーなので、定番として生き残ると私は思います。

むしろ、開発陣が目指したのは世界。

私も世界に勝負する日本のストリングス音源ということで更なる発展を祈りつつ、日々の制作で使わせていただこうと思っています。

と言っても、私が長年愛用してきたLA Scoring Strings3を全く使わなくなるかと言うとそういうわけではありません。

忘れちゃいけないのが、Tokyo Scoring Stringsは日本のスタジオ規模でよく使われるチェンバーストリングスの音源であること。

つまり、Tokyo Scoring Stringsは大編成の壮大なストリングスサウンドを目指したものではないため、Tokyo Scoring StringsとLA Scoring Strings3を人数感で勝負させてしまうのは違う話です。

ただ、それにしても、LA Scoring Strings3は演奏している人数の割には広がらないよね…チェンバー寄りの音がするんだよな…という気もいたしますが、あくまで人数感でTokyo Scoring StringsとLA Scoring Strings3を使い分けるというのが今後の私の方針となりそうです。

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Tokyo Scoring Strings VST Expression Mapダウンロード

Tokyo Scoring StringsのVST Expression Mapを作りましたので、公開いたします。

こちらのデータに関するお問い合わせは、当教室受講者様に限らせていただきます。何卒ご了承いただきますようお願い申し上げます。

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