ソロボーカルの場合

パンの設定方法の基本

ボーカルのパンは真ん中です。これについてはほとんど例外がないと言ってしまって良いでしょう。

多くのリスナーはボーカルを中心に音楽を聴いていますし、リスナーはその楽曲の良し悪し、好き嫌いもボーカルで判断していることが多いです。

また、真ん中にボーカルを置くことによって、左右のスピーカーまたはイヤフォン両方から音が出ることになるので、音量も稼ぎやすく、明瞭に歌詞や歌のニュアンスをリスナーに伝えることが出来ます。

ただし、あくまでボーカルのパンが真ん中になるのは、楽曲における主メロを担当していることが条件。

歌モノではなく、インスト曲の中でアレンジで使われるボーカルはこの限りではありません。

ボーカルをステレオに広げる方法

ボーカルのパンを真ん中に置きながら、ステレオに広げることもなされます。ステレオに広げる方法としては以下の方法が考えられるでしょう。

リバーブを使う

Waves IR-L
WavesのリバーブIR-L

どんなジャンルの音楽でも使われているステレオに広げる方法としては、リバーブをかけること。

ドライ音は真ん中でモノラルですが、リバーブの響きをステレオで加えることによって、ボーカルがオケに馴染むという効果が起きるのです。

リバーブの効果

ディレイを使う

Waves-SuperTap
Wavesのディレイ SuperTap 2-Taps

やまびこ効果を起こすディレイですが、ステレオディレイを使うことにより、真ん中からドライ音、左右からディレイ音という風に物理的に音が出てくるポイントを広げることが出来ます。

ディレイの効果

ディレイを使ってボーカルを広げる方法は、以下の記事でも取り上げさせていただいております。

ダブラーを使う

Waves Doubler

ダブラーは、ソースのピッチに揺らぎを与え、音像にステレオ効果を加えるものが多いです。

リバーブに比べると左右に広がった感は弱いですが、シンセ中心のトラックだと生々しいボーカルは浮いてしまうことがあるので、馴染ませる方法としても使えます。

また、「ボーカルの音を加工したい」というご希望をいただいた当DTM教室受講者様にダブラーをご提案すると、好感触をいただくことが多い人気の効果でもあります。

ダブラーの効果

ボーカルが2人(デュオ)の場合

ボーカルを2人で担当することをボーカルデュエットまたはボーカルデュオなどと呼びます。ここではボーカルデュオという言葉で書かせていただきます。

主役+サブのデュオの場合

デュオと言っても、メインとサブという扱いの場合、サブのパートはハモをとったり、たまにメインボーカルをとるといった感じになるため、私は以下のような感じでパンを設定することが多いです。

  • メインボーカル…真ん中
  • サブボーカル…真ん中

サブボーカルだけ右か左に逃すということも考えられるのですが、主役は真ん中という原則に立ったミックスの方が私は好みです。

もちろん、2人とも真ん中だとぶつかるのではないかとお考えになる方もいらっしゃると思いますが、個人的にはEQとコンプでメインを前、サブを後ろというように置くことも十分可能なので、案外両方真ん中でも問題ないことが多いです。

主役と主役の場合

このパターンの曲を作られている当DTM教室レッスン受講者様で多いのは、ボーカロイド鏡音リンレンを使われている方です。

双方が主役なので、前に出しておく必要があり、2人がユニゾンで歌っている箇所も多くなることから、両方とも真ん中におくとピークが出てきてしまったり、帯域かぶりが起きやすくなります。この場合、私は以下のような感じでパンを設定することが多いです。

  • メインボーカルA…L5〜10
  • メインボーカルB…R5〜10

個人的に、LRに均等に振り分けてミックスする作戦をとりますが、離れすぎるとバラバラに聴こえてしまうのと、左右にパンを振ってあるハイハットやギターと干渉してしまうため、よくよく聴けば左右に振られているかも…ぐらいの塩梅にするのが好みです。

ボーカルグループ(3人以上)の場合

3人以上のグループの場合、アイドルのTDの現場では、メインとなるメンバーのボーカルを真ん中に置いていることが多いようです。

また、私はアレンジャーとしてTDに参加していて、主にオケ部分のサウンドプロデュースを担当することが多いので、ボーカルについてはアーティストやアイドルを担当されているディレクターさんの判断にお任せさせていただいていますが、多くのディレクターさんは一番歌唱力のあるメンバーのトラックをメインに使われています。

実際、私も映画のPR用に俳優さん3名の声だけで主題歌をアレンジし、ミックスまで担当して2mix納品するお仕事がありましたが、ボーカルが3人以上の場合、様々なパターンがありますが、私が過去担当させていただいた作例では以下のようにして仕上げました。

3人ボーカルの場合

  • メインメンバー…真ん中
  • サブA…L10〜20
  • サブB…R10〜20
3人ボーカルミックスの私の作例

メインボーカルが入れ替わっていくことが多いので、3人メンバーならば3トラックしか作らないということではなく、1人のメンバーに対して2トラック用意して、メイントラックとサブトラックとすると、余計なオートメーションを書くことなく作業が進められると私は考えています。

4人ボーカルの場合

  • メインメンバー…真ん中
  • サブA…L20
  • サブB…R20
  • サブC…真ん中

サブCメンバーは、メインメンバーとの声の相性で決めるのが理想

サブAとサブBはメインメンバーと声質が異なるメンバーを採用すると、分離感が出しやすい

ボーカルが3人以上の場合、オケに対してボーカルは大きめでミックスすることが多い…というか、好まれる傾向にあるため、デュオに比べると左右に広げるのが最適解かなと個人的に考えています。

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